バイク仲間
個展会場で久しぶりの再会。右端の男は杉江と云って元々は写真家なのだが、船舶関係の仕事をしている男で、そもそもはバイク仲間である。彼はトライアンフ・ボンネヴィルに乗っていて、トラ使いとしては私の知っている中でも有数の乗り手だ。昔バイク雑誌「クラブマン」を立ち上げた小野勝司と写真家西口の4人で時々ツーリングをしていた。夫々バイクも外車に拘り、我ら中年暴走族と かっ飛ばしていた。杉江の話によれば、かつて私が乗っていた旧MVアグスタ&Sと2台乗っていたが、そのフェアリングの無い750の4気筒を回り回って西口が持っていたらしく、それを京都のバイク好きに結構な値段で売ったらしい。其のバイクには私も少なからず思い出があって、イタリアンならではの、まるでソフィア・ローレンのようなグラマラスなタンクで、そいつを富士スピードウェイで走らせたことがあるが、フレームが弱くストレートでヨーイングが激しかった。其れでも根性でタンクを挟みぶっ飛ばしていた。コーナーでバンクするとサイレンサーがガリガリと擦ってしまい、消音機を外し、飛ばすと轟音この上なかった。アグスタの4発は5000回転以上になるとカムに乗り、得も言われぬ爆音がFiscoに鳴り響いた。そうやってコーナーを攻めると今度はフレームが路面に擦れ、やはりサーキットのバイクではなかった。何十台とバイクは乗って来たが、忘れ得ぬバイクの1台だ。そうやって最もバイクを楽しんだ仲間達だが、小野勝司は亡くなり、杉江もバイクは降りているようだ。それでも久しぶりに会うとバイクの話に戻り、時が止まる
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真ん中に写っている写真家長浜治は高校の同級生で、彼がN.Y.で撮ったオートバイ・ギャング「ヘルズ・エンジェルス」の写真は有名だ。彼自身もBMWのバイクに乗っていて一緒に走った事がある。とまぁ、写真家はカメラがそうであるように、メカに対するフェティシズムが強くあって、バイクや車好きが多い筈だ。職業が呼ぶ趣味の世界は限りなく広く、楽しいものだ。